恋の神様はどこにいる?
でも本当に志貴の口から優しい言葉が返ってきたら、それはそれでおかしいというか、志貴らしくないわけで。
結局、いつも通りの志貴がいいって結論に達してしまう。
意地悪で俺様が志貴がいいなんて、私も余程の変わり者?
決まりが悪くて苦笑を漏らすと、ガスコンロの前に立つ志貴の背中を見つめた。
私の恋は、まだ始まったばかり。今は一方通行の気持ちだけど、少しでも早く志貴に振り向いてもらえるように。一ヶ月で志貴を落とせるように、頑張るしかないよね。
ひとり両手でガッツポーズを決めていると、フライパンを手にしたまま振り向いた志貴とバッチリ目が合った。
「変な格好してないで、早く皿用意しろよ。馬鹿」
「ば、馬鹿は余分でしょ!!」
あらぬ格好を見られ慌てて後ろを向くと、恥ずかしさで熱くなった頬を押さえた。
何もガッツポーズを決めてる最中に、振り向くことないじゃない!! しかも馬鹿って、ホント口が悪いんだから。
ブツブツ文句を言いながら棚から皿を二枚取り出すと、それをぶっきらぼうに黙って渡す。
「そんな態度でいると、食わしてやらねーから。いいのか?」
「ここ、うちのキッチンなんですけど?」
「この材料、俺が買ったんですけど?」
そう言うと志貴は右の口角をクイッと上げ、勝ち誇ったような顔を見せた。