恋の神様はどこにいる?
「偉そうに」
「はあ!? 小町こそ俺に向かってそんな言葉吐くとは、度胸あるじゃないか? 泣きそうだったくせに」
「なっ!? 志貴の前で泣くわけないでしょ!!」
志貴、知ってたんだ。だから抱きしめてくれたとか?
なのに私はやっぱり素直になれなくて、憎まれ口を叩いてしまう。
でも本当に、さっきまでの泣きたい気分はどこかに行ってしまっていて。
何故だろう。今までの私ならこんな時、きっと相手に甘えて泣いているはず。なのに志貴が相手だと、こんな素っ気ない態度をとってしまう。
“好き” だから?
好きならもっと甘えればいいのに、志貴だとどうも調子が狂う。
意識しすぎ? なのかもしれないけれど。こんな気持ちになったのは初めてで、どう接していいのかよくわからない。
志貴の私に対する気持ちが少しでもわかれば、違う態度をとったのかもしれないけれど。それは今の時点では、全然わからなくて。
なんて思い始めると抱きしめられていることが急に恥ずかしくなってきて、身体がモゾモゾし始めてしまう。
「志貴。そろそろこの腕、解いて欲しいんだけど?」
「ホント、小町は素直じゃないねぇ。まあそんなこと、ずっと前からわかってたけどな」
「ずっと前?」
なんでずっと前なの? 四日前の間違いじゃない?
ホント、おかしな志貴だ。
クスッと笑い声を漏らすと、抱きしめられていた腕の力が緩められた。