恋の神様はどこにいる?
「鞄も持ったし、これで大丈夫」
チェックが終わると鞄からスマートフォンを取り出し、香澄にメールを送る。
『今から華咲神社で、面接受けてくる』
こんなに事が早く運んだのは香澄のおかげ。ホントはもっと伝えたいことがあるけれど、話し出したら止まりそうもないから今はこれだけ。
スマートフォンの電源を切って鞄にしまうと、いつもなら駆け足で下りる階段を慎重に下りた。
本当なら自転車で行きたいところなんだけど、いかんせん今日はバシッとスーツで決めているわけで。お気に入りの赤い自転車を横目に通り過ぎると、華咲神社に向かって歩き出した。
「それにしても、今日も朝から暑いよね」
梅雨とは名ばかりで、ここ何日かまとまった雨は降っていない。天気が良ければ日中は、もう夏の暑さが身体を襲ってくる。
冬生まれの私は、夏が得意じゃない。出来れば涼しい部屋で、過ごしたいところだけれど。
「これからは、そんなことも言ってられないよね」
今までの事務員とは違い巫女の仕事は、ずっと事務所内で仕事って言うわけじゃないと思うし。巫女の衣装自体、きっと暑いよね。
「なんか、自信無くなってきた」
神社に向かうスピードが、自然と遅くなっていく。
腕時計を見ると、まだ九時十五分。余裕を持って家を出たから、のんびり歩いたって全然間に合うんだけど。