恋の神様はどこにいる?
志貴は『十時に社務所に来い』って言っていたけど、面接って誰がするんだろう? やっぱり華咲神社で一番偉い宮司、志貴と千里さんのお父さん? そこに千里さんくらいは同席するのかな? もしかして志貴もいたりして。
志貴から『巫女になれ』なんて言われたから、すごく安易な気持ちで面接に向かっていたけれど、なんか急に緊張してきちゃったじゃない。
次の角を曲がって少し行けば、神社の入口にある赤い鳥居が見えてくる。
“引き返すなら今よ!!” なんて、私の中の弱い部分がそんな言葉を投げかけてくるから、足が止まってしまう。そしてその言葉に誘導されて、一瞬逃げてしまいそうになったけれど……。
そんなことをしたら、新しい自分に変わることはできない。何よりもう二度と、志貴に会えなくなってしまうかもしれない。
それだけは絶対に嫌。巫女になるって、志貴と約束したんだから……。
胸元をギュッと掴むと、大きく息を吐く。
志貴への気持ちと自分を変えたいという思いは、そんな中途半端なものじゃない。
恋と仕事を一緒にするつもりはないけれど、今回に限っては切っても切れない大事なところ。
絶対に巫女になって、変わっていく私を志貴に見てもらいたい───
それが私の、志貴を落とすための唯一の方法。
ちょっと言葉は古いけど、やるっきゃない!! ってやつだ。
そう心に強く刻むと、ふと軽くなった足を一歩前へ動かす。さっきまでより軽くなった足取りは、神社に向けて一直線に歩き出した。