恋の神様はどこにいる?

けれど私の身体に衝撃が襲うことはなくて。逆に、逞しい腕と温かい胸に受け止められてしまう。

「ったく。だから走るなって言っただろ、馬鹿」

「馬鹿……じゃないけど、ありがとう」

こんな時も素直になれない私は、可愛くないんだろうけれど。志貴に助けてもらって嬉しいくせに、照れくささのほうが勝ってしまってこんな返事しかできなくて。

でもこのまま抱かれていたいと勝手なことも思ってしまったりするから、自分で自分に呆れてしまう。

「ちゃんと来たな」

「え? なんで?」

「おまえのことだから、来る途中で怖気づくんじゃないかと思って」

「そ、そんなこと……」

ありました。本当にあったから、返事がしどろもどろになってしまう。

志貴ってなんでそんなに私の事わかるんだろう? 神主さんって、人の心を読むのに長けているとか?

でも不思議とそんな志貴が嫌じゃなくて。むしろ、ちゃんと私のことを見ていてくれているって安心できるというか。

早い話が、嬉しくて。

段差に躓いて転びそうになったのを助けてもらっただけなのに、抱きしめられて『ちょっとラッキー』なんて思っている私は、もう相当志貴のことが好きなんだと思う。



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