恋の神様はどこにいる?
「やっぱり小町ちゃんは可愛いね。顔、真っ赤にして」
真っ赤にさせたのは千里さん、あなたでしょ? そこ、ちゃんとわかってます?
頬を膨らませ少し怒ったような顔をして、千里さんを軽く睨みつける。
「小町ちゃん、そんな睨まない睨まない。さ、みんな待ってるよ。行こう」
「え? みんなって……」
誰ですか? って聞こうと思った時にはもう、私の左手は千里さんに握られていて。志貴を置いたまま千里さんに引っ張られ、階段を登り始めていた。
「千里!! その手、離せ!!」
後ろからは、志貴の叫び声。振り向けば志貴が血相を変えて階段を駆け上がってきて、私の空いている右手をパシッと掴んだ。
当然私は両方から引っ張られる形になり、上にも下にも行けなくなってしまう。
「千里さんも志貴も。私はひとりで歩けるから、手を離して」
一体何なの、この状態!!
離してとお願いしても志貴も千里さんもお互い譲らず、こう着状態が続いている。
「兄貴が離せよ」
「いやいや、ここは志貴が離すべきでしょ?」
「あ、あの……」
私はどっちでもいいので。と言うか、ふたりとも離せば万事オッケーだと思うんだけど。
なんて、今のふたりにそんなことを言っても、火に油を注ぐことになるだけ。でもこの状態を早く打開したい私は、一体どうしたらいいの……。
困り果てて項垂れると、階段の上から千里さんを呼ぶ声が聞こえた。