恋の神様はどこにいる?
「小町さんと言ったかな?」
名前を呼ばれただけなのに、身体がびくんと大きく跳ねてしまう。
「は、はい。真野小町と申します。今日は突然お邪魔して、申し訳ありません」
自分でも何を言っていいのかわからなくなってしまい、その場でペコリと頭を下げた。
「はははっ。何もそんな硬くなることはない。早く顔を上げて、リラックスリラックス」
あ、あれ? なんだか急に、雰囲気が変わった?
それでも緊張していることには変わらなくて、恐る恐る顔を上げるとニコニコと笑っている志貴のお父さんと目が合った。
「いや~、志貴がいきなり『巫女候補の女の子を連れてくる』なんて言い出した時には、正直どんな子が来るかと思っていたけれど。しっかりとした明るい子で良かった。はい、合格。小町さん、これからよろしくね」
「ご、合格、ですか?」
「どうしたの、小町ちゃん? 巫女になりたいから、今日ここに来たんでしょ?」
千里さんにそう言われても、なんだかピンとこなくて。
「面接って言われてたから、こんなにあっさり決まるなんて思っていなくて。本当に私なんかでいいんですか?」
やっぱり自信のない私は、そんなことを聞いてしまう。でも、お父さんから返ってきた言葉は以外なもので。
「小町さんだから、いいんです」
「私……だからですか?」
「そう。だったよな、志貴?」
「お、俺に振るなよ」
お父さんが志貴に話を振ると、志貴は何か都合が悪かったのかサッと顔をそむけた。