恋の神様はどこにいる?
頭の中では言いたいことが次から次へと出てくるのに、それが口から飛び出すことはなくて。
『俺以外のやつにそんな顔見せたら罰じゃ済ませねーから』の言葉に大きく反応した脳は、私を黙って頷かせた。
「スマホ貸せ。連絡先、登録する」
「う、うん」
まだ正気に戻っていない私は鞄からスマートフォンを取り出すと、言われるがままにそれを志貴に手渡す。
志貴は素早く登録を済ませると「よし、完了」と呟き、それを私に返した。
「俺からの電話は、三秒以内に出ろよ」
「うん、わかった……って三秒以内? 三秒以内になんかに出れるわけ無いでしょ!! 志貴、馬鹿じゃないの?」
志貴の俺様発言に自分を取り戻した私は、志貴に向かって大声を張り上げる。
「そんな大きな声出していいわけ? ここに俺といることバレるぞ」
「あ……」
そうだった。慌てて両手で口を押さえると、志貴がクククッと声を押し殺して笑いだした。
「小町をからかうと、おもしれー」
「こっちは全然面白くない!!」
小さな声でそう叫ぶと、まだ近くにあった志貴の身体を押しのける。
「もう帰る」
「下まで送ってこうか?」
「子供じゃないんだから、いい!!」
「そう照れるな」
「照れてない!! っていうか、志貴もさっさと仕事に戻りなさいよ」
「はいはい、わかったって。じゃあ気をつけて帰れよ。また連絡する」
そう言うと、やっぱり私の頭に手を乗せてポンポンッと優しく撫でた。