恋の神様はどこにいる?

先週まで彼氏がいたから、洋服に困ることはない。お気に入りのワンピースや、これからの季節のために買ったブラウス。次から次へと引っ張りだしては、ベッドの上に並べていく。でも、どれもこれもイマイチで。

何着か来てみては「これでもない」と脱ぐ、の繰り返し。

なんだか何を来ても女をアピールしているみたいな服ばかりで、正直自分に似合っているとは思えない。

クローゼットの下にある引き出しに手を伸ばすと、一枚のチュニックを取り出した。何の変哲もない無地の、でも胸元に緩くドレープが施されたブルーグリーンのそれを着ると、黒白チェックのクロップドパンツを合わせた。

「いいんじゃない?」

今の私はこんな気分。特になんの飾りっけもないけれど、背伸びも気負いもないありのままの私。

メイクはシンプルに、髪は毛先を少しだけカールさせると手ぐしでふんわり一つにまとめ、耳の高さくらいでポニーテールを作った。

「これでよしっと」

鏡の前に立ち全身を映しだすと、等身大の自分がいた。

「まだ志貴が何時に来るのかわからないのに」

用意万端で浮き足立っている自分に、笑いが込み上げてくる。


早く志貴に会いたい───


逸る気持ちを何とか抑えると、志貴からの連絡を待つためにスマートフォンを握りしめた。



< 147 / 254 >

この作品をシェア

pagetop