恋の神様はどこにいる?
先週まで彼氏がいたから、洋服に困ることはない。お気に入りのワンピースや、これからの季節のために買ったブラウス。次から次へと引っ張りだしては、ベッドの上に並べていく。でも、どれもこれもイマイチで。
何着か来てみては「これでもない」と脱ぐ、の繰り返し。
なんだか何を来ても女をアピールしているみたいな服ばかりで、正直自分に似合っているとは思えない。
クローゼットの下にある引き出しに手を伸ばすと、一枚のチュニックを取り出した。何の変哲もない無地の、でも胸元に緩くドレープが施されたブルーグリーンのそれを着ると、黒白チェックのクロップドパンツを合わせた。
「いいんじゃない?」
今の私はこんな気分。特になんの飾りっけもないけれど、背伸びも気負いもないありのままの私。
メイクはシンプルに、髪は毛先を少しだけカールさせると手ぐしでふんわり一つにまとめ、耳の高さくらいでポニーテールを作った。
「これでよしっと」
鏡の前に立ち全身を映しだすと、等身大の自分がいた。
「まだ志貴が何時に来るのかわからないのに」
用意万端で浮き足立っている自分に、笑いが込み上げてくる。
早く志貴に会いたい───
逸る気持ちを何とか抑えると、志貴からの連絡を待つためにスマートフォンを握りしめた。