恋の神様はどこにいる?
「悪い、待たせたな」
志貴は車から降りると、そう言いながら私に駆け寄った。
志貴から「仕事が終わった」と連絡が来たのは、最初に電話があってから四時間後の午後八時。
今日は大して動いていなかったから、そんなにお腹も空くことなく待ってられたけれど。
それより志貴に会いたい気持ちのほうが上回ってしまい、落ち着きなく部屋の中をウロウロしていたら少々疲れてしまった。
でもそんな身体と気持ちの疲れも、志貴の顔を見れば一気に吹っ飛んで。
「お仕事、お疲れ様」
それはただ何となく、ごく当たり前に口から出た言葉。仕事から帰ってきた父親に、よくそんな風に言葉を掛けていたから自然と出てしまった。
でも志貴は一瞬驚いたように目を見開くとふいと横を向き、頭をばさばさと掻きむしった。
あれ? 私なんか、言ってはいけないことを言ってしまった?
でもそれが何なのかわからず、首を少し傾げ覗きこむように志貴を見ると、首元に光るプレートネックレスに目を奪われた。
そういえば今日の志貴の格好、いつもより少しお洒落してる?
七分丈のVネックボーダーTシャツにカーキ色のチノパン。一番最初に目がいったプレートネックレスが、硬派で印象的だ。
普段の神主姿とギャップがありすぎて、ドキドキが止まらない。