恋の神様はどこにいる?

まだ五鈴さんと決まったわけじゃないのに、ひとりで勝手に勘ぐってひとりで勝手に落ち込んで。

志貴のこととなるとどうしても、悪い方へ悪い方へと物事を考えてしまう。

それだけ志貴のことが好きってこと?

誰だって好きな人には、自分だけを見ていてほしくて。ふたりでいるときには、誰にも邪魔されたくなくて。

まだ恋人でもなんでもないのに……。そんなことを思ってしまう自分が嫌になる。

「勝手だよね」

自嘲気味に笑うと、視線を自分の手元に戻した。


しばらくして志貴が車に戻ってくると、運転席に乗り込む。

「待たせたな」

志貴は言葉短めにそう言うと、エンジンを掛けてすぐに車を走らせた。

「腹、膨れたか?」

「うん」

本当は普通でいたいのに、電話のことが気になって答えが素っ気なくなってしまう。

そんな私に何かを悟ったのか、志貴が透かさず言葉を返す。

「なんか怒ってんの?」

「別に」

怒るなんてお門違いなのに、電話のことに何も触れない志貴に怒っているのかもしれない。

だったら自分から聞けばいいじゃない、『さっきの電話は誰から?』って。

でもそんなこと聞いて、志貴に嫌われたくない。でもやっぱり知りたい。

私、矛盾してる。



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