恋の神様はどこにいる?
はあ~と大袈裟にため息をついて、「あっ」と両手で口を押さえた。
「なんだよ、そのデッカイため息」
そりゃ気づくよね、あんな大きなため息。でも出ちゃったものは消せないわけで。
「自分で自分がわからなくなっちゃって」
「は?」
「自分の気持ちを持て余すと言うか、なんというか……」
「そんなこと俺も同じだよ。毎日何やってんだ俺……ってな。でも、そういう時間も大切じゃね? 焦ったっていいことないし」
「そんなもん?」
「そんなもんだろ?」
焦ったっていいことない……か。それもそうかもしれない。
志貴と出会ってまだ一週間。最初は『何なんだ、コイツ』なんて思っていたけど、急速に気持ちが動いてしまって、気づけばこんなにも好きになっていた。
だけどどうしていいのかわからなくて、ひとりで勝手に考えこんで。気持ちばっかり焦ってしまって、肝心なことを忘れてしまっていた。
彼女も好きな人もいないって言った志貴の言葉を信じて、突っ走るって決めたじゃない。
だったらつまんないことは考えず、今はただ志貴のそばにいればいい……。
志貴に気づかれないようにコクンと小さく頷き、決心を固める。
急に気分がシャッキリして背筋を伸ばし前を見ると、アパートが視線に入ってきた。
「着いたぞ」
行きには感じなかった、ラーメン屋までの距離。
意外と近かったんだ……。