恋の神様はどこにいる?
「な、何?」
その目が何を語っているのか、何となくわかって志貴から距離を取る。とは言えここは狭い車の中。距離をとったところでしれていて。志貴が身体を近づけてくると、すぐに背中がドアにぶつかってしまった。
「ちょ、ちょっと志貴? 身体が近いんだけど……」
そんなに近づかれたら、高鳴る心臓の音が聞こえてしまいそうで恥ずかしい。
でも志貴はそんなこと知る由もなく。
「小町が女ってとこ、見せてもらおうと思って」
なんて妖艶に微笑みながら、耳元に顔を寄せた。そして耳にふ~と息を吹きかけると一言。
「うっそ」
「え?」
「おまえが女なのはわかってる。だから困ってんだし」
「私が女だと、何が困るの?」
「ああー、もうその話は終わりだ、終わり。どうせまた明日会えんだろ。さっさと寝て、明日に備えろ、馬鹿」
「また馬鹿って言った!!」
まだ近くにある志貴の肩を叩こうとして、その手をあっさり取られてしまう。
「“馬鹿な子ほど可愛い”ってよく言うだろ。じゃあな、おやすみ」
手を引き顔を寄せると、志貴は私の頬にキスを落とした。
「おや、すみなさい……」
車から降りると、振り返り志貴を見る。
いつの間にかウインドウを開けていた志貴は小さく手を振ると「早く寝ろよ」の言葉を残して、その場を去っていった。