恋の神様はどこにいる?
「相変わらず勝手なんだから」
スマートフォンを見つめてそう呟くと、洗面所に向かう。
「うわぁ……」
鏡で自分の顔を見て、げっそり。お風呂に入らなかったのはもちろん、顔さえ洗ってなかったから肌はボロボロ髪はボサボサ。
「やっちゃった。これは、急いで支度しなくっちゃ!!」
鏡の中の自分に発破掛けると、バスルームに急ぐ。
熱いシャワーを頭から浴び、ささっと顔と身体を洗う。本当ならばもう少し丁寧に洗いたいところだけど、今はちょっとその余裕が無い。
まだ二時間あるじゃない? と思うかもしれないけれど、女の支度には時間が掛るもの。シャワーだけに時間を掛けていては、後が詰まってしまう。
それでもシャンプーだけはお気に入りの香りのものを使って念入りに髪を洗うと、焦っていた気持ちが少しだけ緩和した。
バスタオルを身体に巻いて、ドライヤーで髪を乾かす。ある程度乾いたらそのままの格好で部屋に戻り、ドレッサーの前に座った。
巫女といえば、薄化粧? バッチリメイクの巫女さんなんて見たことないし。
普段より控えめな化粧をし、髪を整えようとして手を止めた。
「今日から仕事って、巫女の格好するのかな?」
巫女といえば、長い黒髪を後ろで一つに束ねるイメージがあるのだけど。
「あはは。黒髪には程遠いよね」
頬にかかる髪を一束掴むと、目の前に透かす。
そういえば五鈴さん、すごく綺麗な髪だったなぁ。巫女が着る白の小袖と緋袴に、サラサラの黒髪がきっとよく映える。
それに比べて私ときたら……。
「って、また弱気になってどうするの!! 頑張るって決めたじゃない。さっさと用意するよ!!」
鏡に映る自分にそう言い聞かせると、髪を後ろでひとつにまとめた。