恋の神様はどこにいる?
「小町!! 何突っ立ってんだよ!!」
私に気づいた志貴が車から慌てて出て傘を差すと、私に近づいてきた。
「なんで傘持ってんのに差さないんだよ?」
傘を私の頭の上にかぶせると、雨から守るように身体を抱き寄せた。
「い、いつからいたの?」
「は? 俺?」
「うん」
ここには志貴しかいないでしょ? と言いたいのに、雨で濡れた身体はだんだんと冷えてきて。ブルブルと小刻みに震えだした。
「話はあとだ。車に乗れ」
志貴はそう言って私を助手席に乗せると、リアシートで何かを探しだした。
「お、あったあった。ほら、これで拭け」
ポイと手渡されたのは、粗品と印刷された熨斗が巻かれているタオル。それをじっと見ていると、志貴が私の頭を小突いた。
「何見てんだよ。さっさと拭け、風邪引くぞ」
「うん」
「新品だから安心して使え」
志貴は私からタオルを取り上げると、熨斗をやぶりビニール袋からタオルを出す。そしてそのタオルを私の頭に乗せると、ワシャワシャと拭き始めた。
志貴、私がこのタオルが汚いと思って見てるとでも思ったのかな? そんなことちっとも思ってないのに、可笑しな志貴。
クスッと笑うと、私の頭を拭いていた志貴の手が止まる。
「何笑ってんだよ?」
「なんでもない」
志貴の行動が面白くて笑ったなんて、言えるはずがない。そんなこと言ったらまた『俺にそんなこと言うなんて罰だな』って返ってくるに決まってる。
でもその罰を待っている自分も何処かにいて、また笑いを誘ってしまった。