恋の神様はどこにいる?

「……ったく、こっちの気も知らずにいい気なもんだ。自分で拭け」

ぶつぶつと文句を言うと、タオルを私の顔にバサッとかぶせた。

「も、もうっ。化粧が落ちるじゃない」

「化粧してもしてなくても、大して変わんないだろ」

「それは……」

そうかもしれないけど、女にとって化粧は一種の戦闘武器? みたいなもので。特に好きな人の前では、綺麗でいたいと思うのが女心というものだ。

まあ今日の場合、薄化粧しかしてないから武器にもならないけれど。

車はいつの間にか走りだしていて、神社まで行く途中にあるコンビニの駐車場に入った。

志貴、何かいるのかな?

黙って車から下りた志貴を目で追っていると、コンビニに入った志貴が入口付近で何かをしてすぐに出てきた。その手にはカップらしきもの?

小ぶりになった雨の中、小走りに車に戻ってくると、そのカップのひとつを無造作に私の前へと差し出した。

「身体あっためろ」

カップを受け取ると、コーヒーのいい香りが漂ってきた。

今はどこのコンビニでも見かける、その場で一杯ずつ豆を挽いてドリップして出てくるコーヒーマシン。淹れたての香りが楽しめると評判で、実は私もよくお世話になっている。

身体あっためろなんて、わざわざ私のために買ってきてくれたの?

志貴を見れば、何食わぬ顔でコーヒーを飲んでいて。身体が温まる前に心がほっこり温まってしまい、嬉しさから顔が勝手にほころぶのを抑えられない。



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