恋の神様はどこにいる?
志貴にそれがバレないように目線を外に向けると、しばらく閉じていた口を開く。
「ねえ、いつから待っててくれたの?」
「あ? あぁ……。八時半チョイ前くらいからか」
「そんなに!? だったら連絡くれればよかったのに」
「そんなことしたらおまえ、急ぐだろ。早く行ったのは俺の勝手。おまえが気にすることじゃない」
そう言われちゃったらおしまいだけど。でももうひとつ、気になっていることがあって。
顔を志貴の方に戻すと、彼を見つめる。
「なんで……」
「ん?」
「なんでそんな早くから待っててくれたの?」
「そ、それはだな……」
志貴は言葉をつまらせると、一度だけ咳払いをしてからその後の言葉を続けた。
「おまえを待たせたくなくて。つーかほら、雨降ってるだろ。濡れたら風邪引いたりして、仕事に支障がでるかと……」
「結局、濡れたけどね」
「それはだなっ……」
「はいはい。私がわるーございました。志貴、ありがとうね」
「あ、あぁ」
仕事に支障がでる……かぁ。でも最後、言葉を濁していたような。
本当は心配で、早く迎えに来てくれた?
志貴の照れたような顔が、それが真実だと語っているようで。
勝手にそう思っちゃうからね。
冷えていた身体は一層熱を帯び、コーヒーを一口飲むとその熱は全身へと広がっていった。