恋の神様はどこにいる?
「しょうがない。じゃあ僕が着付けてあげる」
「えぇ~!? そ、それはちょっと困ると言うか。そ、その、下着姿見せられないと言うか……」
どうやって断ったらいいのかわからなくてしどろもどろしていると、私の肩に手を乗せた千里さんが声高らかに笑い始めた。
「はははっ!! 冗談だよ、冗談。そんなことして志貴にバレたりでもしたら、命がいくつあっても足りないからね」
言い終わってもヒィヒィ言いながら笑っている千里さんを見て、またからかわれたんだと頭を抱えた。
「もう。千里さん、装束返して下さい」
「はいはい、どうぞ。でもそうだなぁ、全部着終わったら呼んでくれる? 廊下で待ってるから」
「わ、わかりました」
渋々そう答えると、千里さんはもう一度私の頭を撫で部屋から出て行った。
「はぁ~、疲れた……」
千里さんってつかみどころがないっていうか、何を考えて行動しているのかよくわからない。悪い人ではないんだろうけれど。
「命がいくつあっても足りないって」
志貴にバレても、そんな大げさなことにならないでしょ。
「付き合ってないし」
廊下にいるであろう千里さんに聞こえないように、ボソボソと独り言を呟きながら鞄をロッカーにしまうと服を脱ぎ始める。
下着姿になると、おばあさんに『足袋から履くんだよ』と言われたことを思い出した。