恋の神様はどこにいる?
一時間半ほどした頃、授与所の裏口の扉が開く。
「相さん、ここ変わります。お昼入って下さい」
「ああ志貴くん、ご苦労様。じゃあ、ここよろしくね」
待ちに待った志貴がやってきたというのに、さっきまで全然感じなかった緊張が身体中に行き渡る。
志貴の方を振り返らないまま相川さんに「お疲れ様です」と言葉を掛けると、入れ替わりで入ってきた志貴が相川さんのいた場所に腰を下ろした。
「俺には?」
「え?」
「いたわりの言葉」
「あぁ……」
そういうこと。言い方は俺様口調なくせに、甘えてるというかやっかみみたいなものに感じて笑える。
でもこんなところで笑うわけにもいかなくて。大きく深呼吸して気持ちを落ち着けると、志貴に向き直った。
「志貴さん、ご祈祷お疲れ様でした」
「おう。小町もお疲れ。相さん、困らせるようなことしなかったか?」
「全然してません。志貴じゃあるまいし……」
「はあ? 最後なんだって?」
「何も言ってないですけど?」
ここが授与所じゃなく仕事中でもなかったら、またいつもの調子で『あぁ!? おまえ、誰に向かってモノ言ってんだ?』なんて悪態つかれるんだろうけれど。
今日はここまで。
志貴は外に目を向けると、サッと姿勢を正した。