恋の神様はどこにいる?
★女の涙と男の優しさ?
「小町こっち来い。兄貴も、いつまで手、握ってんだよ」
「はいはい。今日の志貴は怖いねぇ。でも、面白いことになりそうだ。小町ちゃん、またね」
そう言うと握っていた右手を少し上げ、王子さながら手の甲にキスをした。
そして呆然と立ち尽くす私を残して、千里さんは笑顔を振りまきながら境内へと消えていった。
キ、キスされた。あんな王子様みたいにキスされたの、初めてかもしれない。
「おまえ、なに顔赤くしてんの」
「あ、赤くなんかなってないし。……って、あれ? あなたもここの神主さんなの?」
よく見れば志貴と呼ばれたこの男も、浅葱色と色こそ違うけれど袴をはいている。
「は? 言わなかったか? 俺はここの息子で、野々宮志貴。さっきの千里は俺の4つ上の兄貴で長男。って言うかさ、おまえなんで兄貴に抱かれてたりするわけ?」
「さあ、よくわかんない」
「はあ!? わかんなくて抱かれてたの? おまえは相手がカッコ良ければ、誰にでも抱かせるのか? はあ!?」
はあはあ、うるさいヤツ。チンピラかってんの。しかも大きな声で“抱かれたり”とか“抱かせる”とか、お尻の軽い女みたいに言わないでくれる?
だって本当にわからないんだから、しょうがないじゃない。