恋の神様はどこにいる?
「舞いにもいろいろあって今の時代よく行われるのが、浦安の舞・豊栄の舞だな。五鈴には今から浦安の舞の扇舞を舞ってもらう。ちゃんと見とけよ」
「はい」
五鈴さんが部屋の中央に座ると、部屋の空気が一変する。それに合わせてか志貴の表情も真剣なものに変わり、私もピンと背筋を伸ばした。
音楽が鳴り始めると、五鈴さんがゆっくりと腕を動かし舞いが始まる。
テレビでは見たことのある巫女舞も、目の前で見るのは初めて。しかも五鈴さんの舞いは、素人の私が見ても惚れ惚れするような見事な舞いで、その全てに心を奪われる。
「小町?」
息をするのも忘れて舞いを見ていた私に、志貴が声を掛けた。
「おまえ、なんで泣いてんの?」
「え?」
志貴に言われて目元に指を当てると、確かに目からは涙が薄っすら出ていて。
「言葉ではどう表現していいかわからないけど、感動したっていうか胸がじんと熱くなったというか。志貴、私も五鈴さんみたいに舞えるようになる?」
志貴は私の言葉に一瞬目を見開くと、すぐにその表情を和らげて私を見た。
「おまえ次第じゃないの? それに稽古をつけるのは俺だからな」
そうさらっと言いのける志貴の顔はどこか自信に満ちていて、“もしかしたら私にもすぐに舞える?”なんて勘違いしてしまいそうな気にもなってくるからおかしなもの。