恋の神様はどこにいる?
★巫女としての一日
その日家に帰ったのは、十九時過ぎ。
十四時から始めた巫女舞の稽古は、十七時までみっちり三時間。
最初は浦安の舞の話から始まり、それは終わると実際に動いてみる。
志貴に習ってひとつずつ細かい動きを身体に覚えさせていくのだが、これが思っていたよりもゆっくり丁寧に舞うものだから、初めての私には結構キツイものがあって。
もちろん最初から五鈴さんみたいに舞えるとは思ってはいなかったけれど、所詮踊りとたかをくくっていた私は痛い目にあってしまった。
志貴の稽古も『地獄を見せてやるから、覚悟しとけよ』と言っただけあってか、それはそれはまるで鬼コーチのように厳しくて。
一日目からどうなの? なんて、志貴の人間性までも疑いかけてしまう。
でも五鈴さんも言っていたように口は悪いけれど態度にはちゃんと優しさが含まれていて、ちゃんと私が覚えるまで、ひとつひとつ丁寧に稽古をつけてくれた。
時々身体を寄せては『ここの手はこう動かす』なんて手取り足取り指導されると、その密着度に胸が早鐘を打ったりもしたけれど。
これも仕事の一環と自分に言い聞かせて、なんとか初めての舞いの稽古を終えることができた。
『まだまだ動きは硬いけど、初めてにしてはなかなか筋がいい』と志貴にも褒められたし、次回の稽古が楽しみで仕方がない。
舞いの稽古のあとは社殿の閉門に合わせて社殿や境内の清掃、授与所の片付けをして一日の務めは終了した。