恋の神様はどこにいる?
志貴はといえば……。
神社の一日は、朝拝(神様の周りを綺麗にしてお供えをしてから、拝み幸せを祈ること)に始まり、夕拝で終わる。
志貴は私に稽古をつけたあと、その夕拝を済ませひとまずは一日の仕事を終えた。でも実際はまだ事務的な仕事が残っていたみたい。『明日の地鎮祭の準備もあるから、今日は残業だ』とも言っていたから、神職の仕事も大変だ。
家に帰ってすぐに入れた風呂が、ピピピッと音を鳴らして湯が張ったことを知らせる。
巫女舞で普段は使わないような筋肉を使ったのか、身体のあちこちがズンと重い。それを解すために少しぬるめのお湯を張りミルクの香りがするお気に入りの入浴剤を入れると、ゆっくりと浸かる。
明日は日曜日。
本来巫女は土日祭日が休みになることは殆ど無いらしいけれど、本当の仕事始めは来週の月曜日からだからと、千里さんが休みにしてくれた。
志貴も『俺もそうしてやろうと思ってたよ』なんて言っていたけれど、どうやらその辺りの決定権はまだ志貴にはないらしい。
「でも、その気持ちが嬉しいよね」
千里さん相手だとすぐに張り合おうとする志貴だけど、ムキになるところがまたちょっと可愛かったりして。
志貴に向かって“可愛い“なんて、本人を目の前にしては絶対に言えない言葉だけど。今は自分の家で、しかもバスルーム。大きな声を出しても、外に声は漏れ出ない。