恋の神様はどこにいる?
そりゃね、まだ彼女じゃないけれど。抱きしめたりキスしたり、あの行動は何だったわけ?
やっぱりあれは、ただの挨拶に過ぎなかったとか?
私はガックリ肩を落としているのに、志貴とおじいさんの会話は続いていて。
「志貴くん。言葉遣いが普段に戻っているね。と言うことは……」
「絃さん!! ストップ。わかったから。今度、扇寿堂の大福ごちそうしますから、その辺で勘弁して下さい」
志貴は慌ててそう言うと、頭をポリポリ掻きながらうなだれた。
志貴の言葉遣いに、扇寿堂の大福?
確かに扇寿堂の大福は美味しいけれど、それと志貴の言葉遣いになんの関係があるっていうの?
でも今はそんなことより、志貴が私のことを必死に否定したことのほうがよっぽどショックで。志貴の足元にある竹箒を手に取ると、黙って掃除を始めた。
「おぉそうだった。掃除の最中に邪魔をして悪かったね。小町さん、また」
「あ、はい。ごくろうさまです」
手を振る絃さんに頭を下げると、また掃除を始めた。
「おい?」
「はい、なんでしょうか?」
志貴に背を向けたまま、返事を返す。
「なんか怒ってんの?」
「志貴くん。言葉遣いが普段に戻ってますね」
「お、おまえなぁ。どういうつもりだよ?」
「どうもこうもございません。そのセリフ、そっくりそのままお返しします」