恋の神様はどこにいる?
ふんっ、どうだ。
別にキスされたり抱きしめられたりしても、何かが減ってしまうわけじゃない。だけど相手が志貴だと、そうも言ってられなくて。
気持ちが志貴に向いてるから、好きだから、やっぱりそこには甘い期待をしてしまう。
なのに志貴ったら、そんな私の乙女ゴコロを踏みにじって!!
「さっき絃さんに言ったこと、怒ってるんだろ?」
「さあ、言ってる意味がよくわかりません。掃除に集中したいんで、黙っててもらえないでしょか」
「ああでも言っとかなきゃ、絃さんに何言われることか。それにだ、実際まだ彼女じゃないだろ……」
志貴の語尾の声が小さくなっていくのが気になって、竹箒を掃く手を止める。
「なあ小町。あの言葉で怒るってことは、そんなに俺の彼女になりたいわけ?」
「はあ!?」
ガバッと振り向くと、反省顔でもしてるとおもいきやニヤリと笑うしたり顔。ここが境内だということも忘れて、大声を出してしまった。
「ちょ、ちょっと。馬鹿も休み休み言いなさいよ。誰が志貴の彼女になんか……」
「なりたくないのかよ?」
「それは……」
今ここで『なりたい』と言えば、楽になるのかもしれないけれど。どうしても頭の片隅に五鈴さんが見え隠れして、躊躇してしまう。
今はまだ志貴の気持ちもわからないし、心の中に住むもうひとりの私が今はまだその時じゃないって言っているような気がしてしょうがない。