恋の神様はどこにいる?

「もう志貴が余計なことばかり言ってるから、掃除が全然進まないでしょ。早く済ませて、次の仕事に取り掛からなくっちゃ」

「おぉ、ヤル気になってるな。よし、今日もバシバシしごいてやる」

今日もまたこき使われるのか……と思いながらも、志貴の言葉から威圧的なものは感じなくて。クルッと志貴に背中を見せると、クスッと笑みを零した。

新人巫女一日目の今日。境内の清掃のあとは、授与所は元気になった和歌さんに任せ、私は神職の手伝いをしつつ祈祷用の御札作りを教わる。板に紙を巻いていく単純作業だけど、かなりの数を作るからこれが結構忙しい。

午後からは祭典に伴う氏子代表らとの会議のための資料作成や、社報作成を手伝った。

そんなことしながらもあちこちに目を向けると、神職や巫女がいろんな仕事をしていて、表から見ていると分からない仕事が多いことに驚く。

志貴も私のそばに付いてくれることが多いけれど、私に仕事を教えては自分のやらなければいけない仕事もこなす。

真剣に仕事をしながらも時々私に目を向けてちゃんとできているか確認するさまは、いかにも出来る上司そのもの。

そんな普段とは違う真面目な言動と一面に、今まで以上に心を奪われる。

「ボーッとしてんなよ」

コツンとおでこを突かれる。

注意されて突かれたおでこは痛いのに、そんなちょっとした関わりが嬉しいと思うなんて。

志貴に対する“好き”という気持ちは、ますます膨らんでいくばかりだった。




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