恋の神様はどこにいる?
「ふ~ん、結婚ねぇ。それ、ホントの話?」
香澄は肩肘をつくと、疑いの目を向ける。
「たぶん。ううん、この耳でちゃんと聞いたんだから、絶対に間違いない。出来れば間違いであってほしかったけど……」
「まだ好きってわけね」
「当たり前でしょ。本気だったんだもん、すぐに気持ちは変わらないよ」
ガックリ肩を落とすと、香澄が買ってきてくれたパンを一口かじる。
志貴から来たメールを読んで泣いた私はそのまま眠ってしまい、起きたのは昼過ぎ。
少し体調が良くなっていた私はなにか食べようとして、冷蔵庫を開けたら見事にからっぽで。
志貴のことも話したかったし、何も考えず香澄に電話を掛けてしまった。
『食べ物がないからって、仕事中に電話しないでくれる?』
電話口で、そう文句を言っていた香澄だったんだけど。
仕事を早退してまで、食べ物をいっぱい買い込んで駆けつけてくれた。
香澄は私の変化を、いち早く察知する。ちょっと口は悪いけれど、私のことを一番に考えてくれる大切な親友だ。
あれ? 香澄って、志貴に似てるかも。
思わず笑みを漏らすと、香澄にキッと睨まれてしまった。
「何、笑う元気あるんだ?」
「そういうわけじゃないけど。香澄がいてくれて良かったと思って」
「今日はたまたま仕事が早く終わったからいいけど、こんなこと二度とゴメンだから」
「はいはい」
こんな憎まれ口を叩いてもまた同じことがあったら、香澄は必ず駆けつけてくれることを私は知っている。
牛乳を飲んでパンを喉に流し込むと、ふっと息を吐いた。