恋の神様はどこにいる?

「お腹が膨れたら、ちょっと落ち着いた」

「そう、それは良かった。ところで小町、どうするのよ?」

「どうするって?」

「志貴さんのこと。このままでいいの?」

「いいも何も、土曜日には結婚しちゃうんだよ? 私にどうしろっていうの?」

一体香澄は、何が言いたいんだろう?

五日後には結婚してしまう人に何をしたところで、状況が変わるわけでもない。と言うか、そんなことで気持ちが変わってしまうような人ならば、こっちから願い下げだ。

志貴という人間は口や態度は悪くても、本当はきちんと信念を持った心根の優しい人。間違っても、そんなことをするような人じゃない。

だから今更どんなことをしたって、どうしようもないというのに。

「小町は新しい恋を始めたいんでしょ? でも今のままだったら、先に進めないんじゃない?」

「それは……」

「自分の気持ち、ちゃんと伝えてないんでしょ?」

「今更伝えたって迷惑なだけ。ふたりの幸せに水を差すみたいで、気が引けるよ」

「いいんじゃない? そんなことで駄目になるふたりなら、それまでの関係でしょ?」

こんな時いつも、香澄のクールな考え方が私を少しだけ強くする。

確かに私が告白したくらいでふたりの関係がおかしくなるのなら、その繋がりは弱いのかもしれない。

それに私は、ふたりを祝福するつもりでいる。志貴に気持ちを伝えて、その上で五鈴さんと幸せになってと……。

「でも勝手……だよね」

「人を好きになる気持ちは誰にも止められない。たとえそれが結婚している人や彼女がいる人だとしてもね」




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