恋の神様はどこにいる?
いつもより早く目が覚めると、朝食を食べるのもそこそこに家を出る。自転車に跨ると、まだ静かな街の中へ走り出した。
いつもより気合を入れて漕いでいると、十分ほどで神社に到着してしまう。
普段志貴が乗っているライトバンの隣に自転車を停めると、大きく深呼吸をした。
「なんでここにきて、緊張するのよ」
昨日千里さんと話しをしてから落ち着いていた気持ちはざわつき始め、手のひらまで汗ばんできた。
届かない想いを告白しようか、当日になってもまだ迷っていて。
好きな人が結婚する日に告白するなんて、ドラマや映画の中でならともかく、リアルでする人なんていない。
それをしようとしているんだから、迷うのもしかたのないことで。
「やっぱり非常識だよね」
「何が?」
「うおぉっ!!」
「相変わらず、いいリアクションするね。小町ちゃん」
「千里さん!! もう、『いいリアクションするね』じゃないですよ。突然顔を出すの、そろそろ止めません?」
「どうしようかなぁ~」
いつものようにとぼける千里さんに、驚かされたのも忘れてぷっと吹き出してしまう。
やっぱり千里さんは、こうでなくっちゃいけない。
志貴に会うからと緊張してざわついていた気持ちは少しだけ落ち着きを取り戻し、『志貴に気持ち、伝えちゃう?』なんて気にもなってしまう。