恋の神様はどこにいる?
「小町ちゃん、今日は早いね。気合入っちゃってるの?」
「えっと。志貴にちょっと話したいことがあって。式の前ですけど、いいでしょうか?」
「志貴に? 別にいいんじゃないかな。今ならたぶん、新郎控室にいるはずだよ」
「ありがとうございます」
新郎控室。その言葉が、ズンと心にのしかかる。
現実を突きつけられて今すぐ逃げ出したい気持ちをグッと堪え、社務所内にある新郎控室へと向かった。
控室に近づくと、とたんに重くなる足取り。それでも力を振り絞って辿り着くと、ふぅと息を吐いた。
千里さんに志貴のいる場所を聞いてここまで来てしまったけれど、中に人がいる気配を感じて急に怖気づく。
何やってんの、私!!
ここは新郎控室だよ? そりゃ中に人がいるに決まってんでしょ!!
志貴だよ、志貴!!
もうひとりの私が、私にそう言い放つ。
そんなこと、わかってる。わかってるから、怖いんじゃない!!
それでも“逃げる”っていう選択肢は、出てこなくて。しばらくその場で、中の様子を伺っていた。
でもそれからというもの、中はしんと静まってしまい志貴が何をしているのかわからない。
いくら早く来たとはいえ、今日は巫女としての仕事も多い。いつまでもここで立っているわけにはいかなくて、意を決めひとつ頷くとコンコンと扉を叩いた。