恋の神様はどこにいる?
「はい。開いてるよ、どうぞ」
うん? どうぞ?
中から聞こえてきた口調に、志貴らしくないものを感じたけれど。
今日は結婚式当日。いくら俺様の志貴でも、今日くらいは控えめになっているのかな?
そんなちょっと失礼なことを考えながら、ゆっくりと扉を開く。目の前には衝立があって、すぐに中の様子を見ることは出来なかった。
でも、ちょうど良かったかもしれない。
だって志貴の顔を見てしまったら、自分がどうなってしまうのか予測がつかない。衝立がいい目隠しになってくれて、お互いの顔が見えないことは好都合だ。
手に拳を握り目をギュッと瞑ると、勇気を出して言葉を放つ。
「ねえ志貴。このままで私の話を聞いてほしい」
なのにいくら待っても志貴から返事は無くて。それをOKと取った私は言葉を続けた。
「志貴、結婚おめでとう。本当なら心から祝福しなきゃいけないんだろうけど、私にはそれがちょっと難しくて」
きっと志貴、怪訝な顔してるだろうな……。
でもそういう他なくて、衝立があって顔は見えないのに俯き話し続ける。
「私は志貴の言葉や態度を勝手に解釈して、時々悩みながらも勝手に良い方向に考えて、いつの間にか志貴を……好きになってた。一ヶ月で俺を落としたら付き合ってやるって言葉信じて……」
泣くのは昨日で終わりって決めたのに……。
自分の気持ちを話しだすと、やっぱり目に涙が浮かんできてしまう。