恋の神様はどこにいる?
「志貴は可哀想な私に同情して、そう言ってくれたんだよね? でも私はそれを真に受けてしまって。頑張っているうちに、志貴のことがどんどん好きになってしまって」
言ってしまった。とうとう自分の気持ちを、志貴に伝えてしまった。
もうどんなに頑張っても遅いのに。志貴には、五鈴さんがいるのに。
泣くのを堪えて、握っている手に更に力を入れると、衝立の向こうから大きなため息が聞こえた。
そうだよね。今から結婚式を挙げようとしている人に『好き』と告白するなんて、呆れて物が言えないよね。
「志貴には迷惑な話だってわかってる。でもどうしてもそれだけは伝えておきたくて。ごめん」
志貴には何をしているのか見えないのに頭を下げると、衝立の向こうから咳払いが聞こえてきた。
「ゴホンゴホン。えぇ~とこれは、愛の告白だよね? 志貴、彼女何か勘違いしてるみたいだから、ちゃんと返事してあげたら?」
「え?」
今の声は誰? 志貴に似てるような気もするけど、やっぱり口調が志貴らしくなくて。
気になってしょうがない私は、恐る恐る衝立から顔を出した。
「え? えぇ!?」
部屋の中央には紋付袴を着た、見知らぬ男性がひとり座っていて。私にニッコリ微笑むと、目線を部屋の奥の方に移した。
その視線を追うように私も視線を動かすと、そこにいたのは……。