恋の神様はどこにいる?
「志貴はなかなか大変な子だけど、必ずあなたを幸せにしてくれるはずって……」
お母さんの言葉を伝えただけなのに、顔がボッと熱を帯びる。
それは志貴にも感染ってしまい、照れ隠しなのか頭をガシガシ掻くと腕を伸ばして私を引き寄せた。
ポフッと志貴の胸にぶつかると、巫女の衣装を付けているからか私の身体を優しく抱いた。
「はずじゃねぇっつーの。小町を幸せに出来るのは俺しかいないだろ」
「うん」
「あぁ~、早く夜になんねーかな」
「うん」
私も今、志貴と同じ気持ち。
出雲さんと五鈴さんには申し訳ないけれど、志貴とふたりで過ごせる夜になるのが待ち遠しい。
志貴と顔を見上げると、コツンとおでこがぶつかる。
「まずは、いず兄と五鈴の挙式を終わらせるか?」
「うん」
志貴に手を取られると、その手をギュッと握り返した。
式は巫女の先導で、神の御前、本殿へと進む。次は修祓(しゅばつ:罪穢れを祓い心身を清めること)。神職の志貴が祓詞(はらえことば)を奉上し、新郎新婦と参列の方々の穢れを払う。
献饌(けんせん:神様に神饌をお供えする)、祝詞奏上(のりとそうじょう:神職が神様にふたりの結婚を奉告し、加護を祈り祝詞を奉上すること)が終わると、次はとうとう巫女による神前神楽『浦安の舞』の奉奏だ。
志貴や千里さんの前で舞うことはあっても、一般の人に舞いを見せるのは初めてで。緊張もピークに達すると、身体が小刻みに震えだす。
「小町さん、志貴さんがこっち見てますよ」
「え?」
和歌ちゃんにそう言われ目線を上げると、すぐに志貴の視線とぶつかって。志貴の口が動いているのに気が付くと、それをひとつずつ読んでいく。