恋の神様はどこにいる?
今日の車は、いつもの白いライトバンではない。
シルバーに輝くその車は、エンブレムを見れば誰もがわかるくらい有名な外車で。まさかそんな車で迎えに来ると思っていなかった私は、それが志貴だと気づかずにしばらくその車に見入っていたくらい。
「さすがにライトバンじゃマズイだろ。ツレに借りたんだよ」
「そんなの、気にしなくてよかったのに」
「俺が気にするつーの。今日は俺とおまえにとって、記念日になるからな」
な、何の記念日?
またひとりで妄想を繰り広げて、ひとりで恥ずかしくなる。
それに志貴の口から“記念日”なんて、柄にも無い言葉が出てくるから驚くじゃない。
でも……。
色んな意味で、志貴と私の大切な“記念日”になるといいな。
肘掛けにある志貴の腕に緊張しながら触れると、ふっと笑みを漏らした志貴が私の手を捕らえた。
「なに甘えてんの? もうすぐ着くから待ってろ」
相変わらず口はぶっきらぼうだけど、その手は私の手の甲を優しく撫でていて。それだけで志貴の愛情を感じて身体が熱くなってきてしまうんだから、困ってしまう。
しばらくすると志貴は、この街では珍しい背の高いマンションの前に車を停めた。
「どうしたの? このマンションに用事?」
「ここ、俺の新居」
「新居?」
新居ってことは、志貴はこれからここに住むっていうこと?
マジで? ホントに?
驚きすぎて思わず「分譲? それとも賃貸?」と聞いてしまった。