恋の神様はどこにいる?
「分譲なんて買えるかよ。賃貸。まあ最上階ってわけにはいかなかったけど、結構いい景色が見られるぞ」
「ホントに?」
この街はまだ自然も多く残っていて住みやすい街だけど、高いところから眺めたことがなかったから楽しみ。
駐車場に車を停めると、手を繋いでエレベーターに乗り込む。志貴がボタンを押したのは十二階。
どんな景色が見られるのか、胸踊らせながら着いた部屋は。
「スゴい夜景だね」
「だろ。昼間なら、あっちの方角に華咲神社が見えるんだぜ」
そう言いながら志貴は、私の身体を後ろから抱きしめた。
「志貴……」
「ずっとこうしたかった」
「うん」
志貴は甘えるように、顔を首元に埋める。その仕草が可愛くて、でも少しだけくすぐったくて。
「ここなら誰にも邪魔されないからな」
待ちきれないと言わんばかりに、首筋に唇を這わせた。
「ちょ、ちょっと志貴、待って。まだ心の準備が……」
できてない?
自分で自分に問いかけてみても、やっぱりまだ答えは出ていなくて。志貴が離れるのを感じると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「志貴、ごめん」
「いいさ。こっちこそ悪い。ちょっと焦りすぎた。まずはいろいろ話をしないとな。先にシャワー浴びてこい」
志貴は私の頭に手を乗せると、ポンポンと優しく撫でる。その顔が切なそうで、胸がギュッと痛くなった。