恋の神様はどこにいる?
私がシャワーを浴び終えると、志貴もバスルームへ向かった。
リビングにひとり残された私は、部屋をくるりと見渡す。
「まだ家具が少ないよね」
リビングには新しいソファとローテーブルがあるだけ。キッチンを覗いても、冷蔵庫はあるものの料理をした形跡は見当たらない。
まだ借りたばかりなんだよね? じゃあ今使っている離れはどうなるんだろう。
この部屋から見える景色もいいけれど、離れの昭和チックな感じも味があって良かったのにな。
そんなことを考えながらソファに座ると、コロンと身体を横に倒した。
今日はいろんなことがあって、いつもよりも疲れた。それは肉体的だけじゃなくて、精神的にも。
志貴の結婚が勘違いで。志貴も私のことを好きなのがわかって、嬉しい気持ちは紛れも無い事実なんだけど。
私には、乗り越えなければいけない大きな障害があって。
「志貴に愛されたいのになぁ……」
「俺がどうしたって?」
「おぉっ!?」
いきなりソファの後ろ側から、志貴が覗きこむように顔を出した。
ちょ、ちょっと、早すぎやしませんか?
びっくりして慌てて飛び起きると、ソファの上に正座する。
それにしても、志貴にしろ千里さんにしろ、どうしてこう突然現れるのかなぁ。こんなんじゃ、心臓がもたないよ。
まだドキドキしている胸を押さえると、呼吸を整えた。