恋の神様はどこにいる?

志貴に触れているところから伝わってくる熱。心臓の鼓動。息遣い。

どれもが私の心を、安らかなものへと導いていく。

私の髪を撫でては、ひと束すくって弄ぶ指。柔らかく微笑みながら私を見つめる、アーモンド形の瞳。少し伸びて無造作に揺れる髪。

志貴の何もかもが愛おしくて。

志貴に向かって手を伸ばすと、その手は呆気なく志貴に捕らわれてしまって。恋人つなぎになった手は、お互いの気持ちを感じ取るかのように固く結ばれる。

「おまえとは表面的な浅いところじゃなく、もっと奥の深いとこ。ここで繋がりたいと思ってる」

志貴はそう言うと、空いている方の手で自分の心臓のあたりをトントンと叩いた。

それって心? もっと奥の深いとこ……心で繋がりたい。

その言葉はまるで魔法でもかけたように、私の心に掛かっていた鍵をいとも簡単に開けてしまう。

自分を変えるためには、何かを乗り越えなければいけない時がある。

今がその時だよと、神様が教えてくれているのかもしれない。

「私も、ここで繋がりたい」

志貴の真似をしてトントンと胸を叩くと、志貴が目を見開いた。

でもそれも一瞬のこと。

すぐに元の優しい笑顔に戻すと、私を見つめたままゆっくり起き上がり身体の上に跨った。

志貴の目と身体に、熱が帯び始めたのがわかる。

不安がなくなったわけじゃない。でもそれ以上に、志貴と愛し合いたい、心も身体もひとつになりたいと思う気持ちのほうが強くて。

志貴となら大丈夫───

その思いが、私を突き動かす。



< 246 / 254 >

この作品をシェア

pagetop