恋の神様はどこにいる?

「単純なことだ。照れくさかった……」

「え?」

「五鈴とは生まれた時からの幼なじみなんだぞ? 俺の性格や好み、アイツはなんでも知ってんだよ。それにアイツは勘がいいからな。いろいろと厄介なんだ」

「だからあんなこと……」

したんだ。照れくさかったなんて。私が思っていたこととまるで正反対のことで、拍子抜けしてしまう。

「だったら」

「まだあるのかよ」

「うん。ラーメン屋さんに行った時のこと。食べ終わって表に出たら電話かかってきて。私を車の中に残したまま外で話してると、一瞬私のことを見てから背中を向けたでしょ? あれはなんで?」

「おまえ、余分なことばっか覚えてんな。あれは兄貴から仕事のことで掛かってきて」

「千里さん?」

「そう。最後、兄貴にからかわれたんだよ、『小町ちゃんと一緒で楽しいだろ?』てな。図星だったから恥ずかしくて、そんな顔おまえに見せられるはずないだろ」

そうだったんだ。

私はもうその時には志貴のことが好きで、全部五鈴さん絡みだと思ってしまい。ひとりで勝手に落ちこんでいた。

恋って、本当に難しい。

すぐに聞けばわかることも、相手の気持がわからないと一歩踏み出す勇気がでなくて。ひとり頭の中で悪い方へ悪い方へ考えて、ドツボにはまってしまう。私の悪い癖だ。

これからはもう少し、素直に生きてみよう。
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