恋の神様はどこにいる?
次に志貴に連れてこられたのは、社務所の並びにある授与所。授与所とは、ご祈祷受付・お札お守りなどの授与品をお渡しするところで、おみくじも扱っていた。
志貴は授与所の入り口で足を止めると、クルッと私の方に向き直る。
「いきなりで悪いんだけど、5時までここで和歌ちゃんの手伝いをしてくれ」
「ええっ!? なんで私が? 巫女の仕事なんてわからないし」
「小町、売り子したことは?」
「コンビニや本屋で、アルバイトしたことはあるけど」
「じゃあ合格。今日はおみくじやお守りを担当してもらうだけだから、小町にもできるって」
そう言うと志貴は、入り口のドアに手を掛ける。
「ね、ねえ志貴、無理だって。それでなくてもこんな格好させられて緊張しちゃってるのに」
「なあ、なんでもやる前から無理っていうのはおかしくねぇ。一度努力してみろよ。それでも無理だったら、その時考えてやるよ」
「でも……」
志貴の言ってることは、わからなくもない。でもいきなり手伝えって、売り子の経験があるならOKって、それは納得いかないと言うか無謀すぎない?
「でももへったくれもない。俺がやれって言ったらやればいいんだよ」
「ねえ志貴って、何様のつもり?」
「別に何様のつもりもないけど。なに、俺様とか思ってるわけ?」
思ってるんじゃなくて、十分俺様です。