恋の神様はどこにいる?
なんて言えるはずもなくて。志貴のことをジトッとした目で見つめ返す。
「なんだよ、その目は? まあとにかくだ、頑張ってこい」
「もう、どうなっても知らないからね」
こうなったらヤケクソだ。もし何かあっても、全部志貴のせいにしてやるんだから!!
売り子の経験があっても、ここは神社。コンビニや本屋とは違い、粛々とした空気が緊張感を高めていく。
私が素人だろうと、参拝者にしてみたらそんなことは関係ない。巫女は巫女。きっとそれなりの態度を求められるだろう。
ふう~と大きく深呼吸すると、手にグッと力を入れた。
ドアを開けると、中にいた千里さんと和歌さんがこっちに振り向く。
一瞬ドキッとしながらも、ペコリと頭を下げる私。
「あれ、小町ちゃん。どうして君が巫女の姿なの?」
小声で話しかけてくる千里さん。
私はその声に合わせるように、千里さんに答えを返す。
「はぁ、どうしてでしょうか。なんか流れで、こういうことになりました」
「兄貴。休みの子の代わりに小町入れるから、よろしく」
「そういうことか。OK、わかった。じゃあ小町ちゃん、ここに座ってくれる?」
そう言って指さされた場所は、千里さんの隣。そこには人ひとり座れるスペースが空いていて、座布団が敷いてある。
千里さんに言われるまま座布団の上に正座をして座ると、周りを見渡す。そこにはところ狭しとお守りや御札が並んでいて、その一角にはおみくじの号が入った筒が置いてあった。