恋の神様はどこにいる?
「小町ちゃんには、お守りとおみくじを担当してもらうから。特に難しいことはないよ。あ、ちょっと見ててね」
そう言うと、目の前にいらした参拝客とやりとりを始めた。
いくつかのお守りを手にした参拝客がそれを千里さんに渡すと、手元にある白い紙の袋にそれを収め、代金を頂いたらそれを渡す。
「ね、簡単でしょ。金額も計算しやすいようにほとんど一緒だし。おみくじは一回百円。お金を頂いたらそこの筒を振ってもらって、穴から出た棒に書かれている番号のおみくじをこの棚から出して手渡す。それだけ。それ以外のことを聞かれたりしたら、僕の方に振ってくれればいいから」
「はぁ……」
確かに千里さんの言ってることは簡単で、それだけかもしれないけれど。
場所が場所だけに、やっぱり緊張してしまう。
「志貴が君にやってもらうって決めたんだ。小町ちゃんならできるよ」
千里さんはそれだけ言うと、自分の持ち場に集中してしまった。
志貴が決めた? 私にならできる?
その根拠はどこにあるのかわからないけれど、こうなった以上やるしかない。
目の前には、参拝客が大勢いる。
私はもう一度髪をギュッと結び直すと深呼吸をひとつし、笑顔で顔を上げた。