恋の神様はどこにいる?

でも職場ってそんなもの。それが当たり前だと思っていた。

普段はやらないような、図面から数値を拾い出す仕事を急に頼まれてやっても、特に感謝の言葉もなく「数字、間違ってないよね?」の一言で片付けられてしまう。

それでも働かなければ給料がもらえないわけで。

だからなのか、千里さんがくれた労いや感謝の言葉は私の心にズンッと響いてしまって。

素直に“嬉しい”と思ってしまった私は、思わず顔がニヤけてしまうのを止めることが出来なかった。

「小町、何その気持ち悪い顔。ピシッとしろよ、ピシッと」

いつの間に開いていたのだろう。

授与所の入り口のドアの前で仁王立ちしている志貴が、面白くなさそうな顔をしてこっちを見ていた。

「あ……」

千里さんたちといることが居心地良すぎて、志貴の存在をスッカリ忘れていた。

しかしまあ志貴は、ふざけたことを言うか怒ってるしか出来ないんだろうか。

普通ならここは『お疲れさま』の一言でもあっていいところじゃない?

なんて志貴に普通を求めること自体、間違ってるか。

はぁ~と諦らめにも似たため息を漏らすと、透かさず志貴の言葉が飛んできた。

「おいっ、何ため息なんてついてんだ!! 俺になんか文句でもあるのかよ? あん?」

出た出た、またもやチンピラみたいな顔。

そんな顔したって怖くありませんよーだ!! 

心の中でそう言うと、横を向いて小さくあっかんべーをしてみせる。
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