恋の神様はどこにいる？

「イテッ!!」

「痛いのはこっちだぞ。ボーッとしてるからぶつかるんだ。ちゃんと前見て歩け」

「はい？　なによ、急に止まる志貴が悪いんじゃない!!」

「何？　もう一度言ってみろよ」

うぅ、怖いじゃない。なにも凄んでみせなくてもいいのに……。

「ご、ごめんなさい」

唇を尖らせながら抗議してみても、結局は謝る羽目になってしまう。

「なあ、今日のバイト代だけど……」

「え？　いい、いらない。まあ志貴に無理やりやらされた感はあるけれど、終わってみたら楽しかったし。いい経験させてもらったから」

「ふ～ん、そう。なら……」

そう言って、志貴はまた何かを考え始めた。

なに？　またなんか企んでる？　嫌な予感しかしない。

志貴が何かを考えだすと、必ずと言っていいほどとんでもない言葉が出てくるんだから。

「飯」

「めし？」

「バイト代の代わりに晩飯奢ってやるから……付き合え」

「は、はい」

それは思っていたことと全然違う言葉で。少しの間のあと志貴の口から飛び出した『付き合え』の声に、何も考えられずイエスの返事をしてしまった。