恋の神様はどこにいる?
★志貴と愉快な仲間たち
「ほら、到着。ここがダチの店」
駐車場に車を停めた志貴がそう言うと、私は窓の外を見て言葉を失った。
あれ? 志貴、お肉がメインのお店って言ってたよね? だからてっきり、洋風なお店をイメージしていたんだけど。
間の前にあるのは、築何十年。いや、何百年とも思えるような、立派なただ住まいの古民家。
入り口の大きな門の両脇には、『焼き処 泉家』と書かれた大きな提灯がぶら下がっている。
なんか、想像していた店とぜんぜん違う……。
車から降りてそばで見ると、その門構えの迫力には圧倒されるものがあって。
こんな高級そうな店だと思っていなかった私は、その門をくぐるのを躊躇してしまう。
「小町、何やってんだよ。腹減った。さっさと行くぞ」
「し、志貴? このお店って高いんじゃないの? 私の今日の働きに見合うところじゃないと思うんだけど」
「は? 言ってる意味わかんね。ごちゃごちゃ言ってないで、早く行くぞ」
なかなか足を動かさない私にしびれを切らしたのか、志貴はそう言うと私の手を握り歩き出す。
「え、あの、志貴、手……」
離して───
何故か、最後の言葉は口から出てきてはくれなくて。
黙って歩く志貴の後ろ姿を見ながら、引っ張られるように歩いて行った。