恋の神様はどこにいる?
「わあぁ……」
古民家の入り口に入ると、和風旅館のロビーのような空間が広がっている。そこで履物を脱いでいると、奥の部屋からひとりの男性が現れた。
「よお、志貴。いきなり電話してきて『場所取っとけ』って、おまえ何様のつもりだ? この店、結構人気あるんだぞ」
「知ってる。だから電話したんだろ」
この人が、志貴の友達? 志貴と話している言葉は少し乱暴だけど、それは相手が志貴だからだろう。
背も高くガッチリとした体つきなのに優しそうに見えるのは、ちょっと垂れている目元のせい?
なんて思いながら仲良さそうに話しているふたりを見ていると、そのタレ目が志貴の後ろに立っている私を見つけ少し驚きの表情を見せた。
「志貴、この子は?」
「ああ、小町っていうんだ。よろしくな」
「よろしくって。志貴、おまえまた……」
「違うよ。コイツはそんなんじゃないから心配するな」
え? なになに? なんだか、穏やかな雰囲気じゃないんだけど……。
もしかして、私が聞いてちゃいけないような話?
何となくこの場にいるのがいけないような気がしてトイレにでも行こうかと思ったけれど、私の手はまだ志貴に握られたまま。
離してと声に出しては言えなくてチョロチョロ動かしてみても、志貴は一向に離してくれる気配がない。それどころか「なんだよ。じっとしてろ!!」と怒られてしまった。