恋の神様はどこにいる?

こんな私のために、神様も力を貸してくれるわけないよね。

なんか、ちょっと恥ずかしい……。

「すみません。お手洗い、お借りしてもいいですか?」

「あ、ああ。そこを左に入って、突き当りにあるから」

「はい、ありがとうございます」

鞄の中からハンカチを取り出すと、俯きがちにその場を離れる。

トイレに入ると、自分の姿を鏡に映し出してみた。目にじわっと涙が滲み、自分の姿がぼやけてくる。

この涙は、志貴に言われた言葉のせいじゃない。自分自身のダメさが、情けなくて恥ずかしくて……。

私はいつだってそう。“でも”“だって”って言葉を使って、物事に本気で向き合わない。体型のことだって気にしてるはずなのに、『そのままで可愛いよ』と言われれば、その言葉を真に受けてしまう。


『おまえの身体って、つまんねーな』


四年前のあの言葉に、未だ縛られ続けている私。また好きな人にそんなこと言われたらって思うと怖くて、だからエッチができないと思っていたけど……。


───本当は違うんじゃない?


ただ自分の身体に自信がないから。四年前と何も変わっていない自分を認めたくないから、四年前に言われた言葉を使って“自分は何も悪くない”“私って可哀想でしょ”って、みんなに思ってもらえるように、自分を正当化しているだけ。



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