恋の神様はどこにいる?
だから志貴に『何の努力もしないで神頼み?』って言われた時、腹がたった反面、正直驚いた。
なんでこの人は今初めてあったばかりなのに、私のことがわかるの……って。
でも今思えば、志貴って不思議な人。
いきなり私の前に現れて。最初は優しかったのに、私の話を聞いたら本性を露わにして。私を馬鹿にするようなことばかり言って怒らせるくせに、次の日また神社に来いって言うし。
私はそんな志貴の言葉に憤慨しながらも、理由はどうであれ結局は従ってしまって。
なんだか気に入らない。
気に入らないけど、何故か志貴のことが気になってしまう自分がいる。
それがどういうことなのか、自分ではまだわからないけれど。
志貴のそばにいれば、何かが変わるかもしれない。ううん、違う。変わりたいと思う自分がここにいる。
『俺を一ヶ月で落としてみろよ』
もし私が生まれ変わったら、志貴は私の腕の中に落ちる?
まだ志貴に対する自分の気持ちはわからないけれど、そのための努力をしてみるのは悪くないのかもしれない。
そう心に決めてもう一度鏡に自分の姿を映しだすと、さっきとは別人の顔をした私が映っていた。
「くよくよしてたって、何も変わらないよね」
鏡に写る自分にそう言い聞かせると、目の淵に溜まっていた涙をぬぐい取った。