恋の神様はどこにいる?

「ちょ小町、今下ろすから動くなって。ほら、早く吐け」

あ、そうだった。まずは、この吐き気をどうにかしなくっちゃ。

志貴がそばにいる手前、女の私が吐くなんて恥ずかしいけれど、もうどうにも止められないところまでそれは来ていて。一気に吐き出すと、はあ~と大きく息をついた。

「ほら、水。一度口ん中ゆすいでから、ゆっくり飲めよ」

「ありがと……」

なんだかやっぱり志貴が優しいんですけど。何か下心があったりするんじゃないの?

水を飲みながら、チラチラと志貴を覗き見る。

「何? おまえまた、やらしいこと考えてんだろ」

「考えてない!! そんなこと言う志貴が、考えてんじゃないの?」

「そりゃ男だからな、年中そんなこと考えてっけど」

「年中って……」

もしかして私、もう何かされちゃったとか?

慌てて自分の身なりを確認してみたけれど、特に変わったところは……ない模様。

「小町おまえ、俺に何かされたとでも思ってるわけ?」

「そ、それは……」

「酔ってる女に手は出さねーよ。それにだ、小町を抱くにはまだ早い」

「は?」

まだ早い? マダハヤイ?

それってまさか、いつかは私を抱くつもりでいるってこと?

なんで? 嘘でしょ?


 
< 62 / 254 >

この作品をシェア

pagetop