恋の神様はどこにいる?

「お前は何も考えなくていいからな。今のは、こっちの話だから」

いやいやいやいや。私を抱くって話に、そっちだけの話なんてあるわけないじゃない。

考えなくていいって言われたって考えてしまうというか、非常に気になるというか……。

そもそも志貴は、好きでもなんでもない女を簡単に抱けるわけ? そういう男なわけ?

「信じられない。志貴のこと見損なった」

「なに? 俺って小町の中で、そんなに高評価だったの?」

「高評価なわけないでしょ!!」

「おまえ、まだ酔ってるな。ベッド戻るぞ」

そう言うなり、志貴はまた私をお姫様抱っこする。

「自分で歩ける。下ろしてよ」

「すぐそこまでだろ。黙って抱かれてろ」

「で、でも……。志貴、重くない?」

「ああ、重いな」

「やっぱり下ろして!!」

行きと同じくバタバタ足を振って暴れると、志貴はしょうがないなぁとでも言うように大きくため息をつき、顔を近づけ始めた。

え? 何が起こるの? と思った瞬間、柔らかくて温かいものが唇に触れた。

「おとなしくしてないと、このまま襲うぞ」

すぐに離れた唇は襲うぞなんて恐ろしい言葉を発しているのに、志貴の瞳は穏やかに真っ直ぐ私を見つめていて。

私はその瞳に吸い込まれてしまい、動くことを忘れていた。



< 63 / 254 >

この作品をシェア

pagetop