恋の神様はどこにいる?
「お前は何も考えなくていいからな。今のは、こっちの話だから」
いやいやいやいや。私を抱くって話に、そっちだけの話なんてあるわけないじゃない。
考えなくていいって言われたって考えてしまうというか、非常に気になるというか……。
そもそも志貴は、好きでもなんでもない女を簡単に抱けるわけ? そういう男なわけ?
「信じられない。志貴のこと見損なった」
「なに? 俺って小町の中で、そんなに高評価だったの?」
「高評価なわけないでしょ!!」
「おまえ、まだ酔ってるな。ベッド戻るぞ」
そう言うなり、志貴はまた私をお姫様抱っこする。
「自分で歩ける。下ろしてよ」
「すぐそこまでだろ。黙って抱かれてろ」
「で、でも……。志貴、重くない?」
「ああ、重いな」
「やっぱり下ろして!!」
行きと同じくバタバタ足を振って暴れると、志貴はしょうがないなぁとでも言うように大きくため息をつき、顔を近づけ始めた。
え? 何が起こるの? と思った瞬間、柔らかくて温かいものが唇に触れた。
「おとなしくしてないと、このまま襲うぞ」
すぐに離れた唇は襲うぞなんて恐ろしい言葉を発しているのに、志貴の瞳は穏やかに真っ直ぐ私を見つめていて。
私はその瞳に吸い込まれてしまい、動くことを忘れていた。