恋の神様はどこにいる?

その後志貴は私を元いたベッドに下ろすと、黙ったまま部屋を出ていこうとする。

「あ、あの、志貴……」

「朝家まで送ってやるから、今日は俺んちに泊まっていけ。俺はあっちのソファで寝る。気分悪くなったら起こせよ。じゃ、おやすみ」

私には何も言わすつもりがないのか、それだけ言うと部屋を出て行ってしまった。

私は志貴のいなくなったドアに向かって「おやすみなさい」と呟くと、布団の中に潜る。

なんで志貴、キスなんてしたんだろう。

人差し指で唇にそっと触れてみる。そこにはまだ志貴の唇の感触がハッキリと残っていて、私の身体を熱くしていく。

暴れる私を黙らせるだけのキスだったとは思えない。いや、思いたくない。

だってあの時の志貴はとても優しくて、でもどこか切なそうで。驚いたのと同時に、胸が苦しくなってしまった。

胸が苦しくなるキスなんて……。

志貴はどんなつもりで、私にキスしたんだろう。

「なんて志貴に聞いても、きっと教えてくれないよね」

布団から顔を出すと、もう一度志貴のいなくなったドアを見つめた。

あのドアの向こうには、志貴がいる?

そう思うだけで胸がドキドキしてくるなんて、私どうかしてる。

「きっと今日は疲れてるんだ。さっさと寝よ……」

さっきよりも深く布団に潜り込むと、無理やりぎゅっと目を閉じた。



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